(大学1年生)
先生。情報セキュリティスペシャリスト試験が廃止された理由が気になります。なぜ廃止されたのでしょうか?
情報セキュリティスペシャリスト試験は長らく情報セキュリティ分野のスタンダードでしたが、新たな技術や課題が出現し、それに対応する必要がありました。
情報セキュリティスペシャリストとは、情報セキュリティに関する技術的な専門性を有することを認定する国家資格試験でした。
この試験は、2009年から2016年まで実施されていましたが、2016年10月に廃止されました。
その代わりに、新たに情報処理安全確保支援士という資格が創設されました。
では、なぜ情報セキュリティスペシャリストは廃止されたのでしょうか?
また、後継資格の情報処理安全確保支援士とはどのような資格なのでしょうか?
この記事では、これらの疑問に答えていきます。
情報セキュリティスペシャリストはどんな資格だったのか?
まず、情報セキュリティスペシャリストとはどんな資格だったのかを簡単に紹介します。
情報セキュリティスペシャリストは、情報処理技術者試験の高度区分の一つでした。
試験は年に2回(春期と秋期)実施されており、午前I・午前II・午後I・午後IIの4つの科目から構成されていました。
- 午前I:情報処理技術者試験の高度区分共通科目で、基礎的なコンピュータや情報セキュリティに関する知識を問うものでした。
- 午前II:情報セキュリティやネットワークに関する応用的な知識を問うものでした。
- 午後I:中規模の問題が3問出題され、2問を選択して解答するものでした。1問はセキュアプログラミングに関する問題でした。
- 午後II:情報漏洩対策や公開鍵基盤などを扱う事例解析問題が2問出題され、1問を選択して解答するものでした。
各科目ともに満点の60%以上を得ることが合格条件でした。
合格率は年によって変動がありましたが、平均して15%程度でした。
この資格を取得することで、以下のようなメリットがありました 。
- 情報セキュリティに関する専門性や技術力を証明できる
- 他の高度区分やITパスポート試験の午前I科目免除が受けられる
- 弁理士試験やITコーディネータ試験など他の資格試験の科目免除が受けられる
- 技術陸曹・海曹・空曹や予備自衛官補などの任用資格になる
- 警視庁特別捜査官などのコンピュータ犯罪捜査官の任用資格になる
つまり、
他者に「情報セキュリティに詳しい人だ」と認知いただけること
今後のキャリアアップに必要な時間短縮に活かせる
の2点がメリットでした。
情報セキュリティスペシャリストはなぜ廃止されたのか?
情報セキュリティスペシャリストは、情報セキュリティに関する国家資格として人気でした。
しかし、2016年10月に廃止されました。
その理由は、以下のようなものが挙げられます。
- 情報セキュリティの技術や環境が日進月歩で変化しているにもかかわらず、一度資格を取得すると更新の必要なく、有資格者が最新の知識やスキルを保持しているかどうか確認する手段がなかった
- 情報セキュリティに関する専門家として、情報システムの開発や運用における技術面だけでなく、経営面や法律面などの幅広い知識や能力も求められるようになってきた
- 情報セキュリティの人材の需要が高まっているが合格率が低く、有資格者の数が不足していた
これらの問題を解決するために、情報処理推進機構(IPA)は、情報セキュリティスペシャリスト試験を廃止し、新たに情報処理安全確保支援士という資格を創設しました。
この資格は、IT業界で初めての士業資格です。
登録制度や更新制度を導入することで、情報セキュリティに関する最新の知識やスキルを持った専門家を育成・認定することを目的としています。
情報セキュリティスペシャリストと情報処理安全確保支援士とのメリットの違いは、
■同じ点■
他者に「情報セキュリティに詳しい人だ」と認知いただけること
■同じではない点■
士業として活動ができるようになった
(が、税理士のように業務実施者の限定資格ではない)
運転免許証のように、定期的(3年毎)に更新。知識の更新ができる
情報処理安全確保支援士とはどんな資格なのか?
情報処理安全確保支援士は、情報処理技術者試験とは別の試験制度です。
2017年から実施されています。
試験は年に2回(春期・秋期)実施されており、午前I・午前II・午後の3科目から構成されています 。
(2023年秋期より、午後は2科目→1科目に集約されました)
- 午前I:情報処理技術者試験の高度区分共通科目で、基礎的なコンピュータや情報セキュリティに関する知識を問うものです。
- 午前II:情報セキュリティやネットワークに関する応用的な知識を問うものです。
- 午後:中規模の問題が4問出題され、2問を選択して解答するものです。
情報処理安全確保支援士を取得するメリット
情報処理安全確保支援士になるメリットは、どこにあるのでしょうか。
IT系初の士業として公的にスキルを証明できる
情報処理安全確保支援士は、IT系では初の士業です。
情報処理安全確保支援士としてロゴマークのイメージファイルが受領できます。
名刺などで利用できるようになります。
(ロゴマーク利用にはいろんな条件があります)
また、セキュリティに関するスペシャリストとして、公的にスキルを証明できます。
ただし、弁護士などの士業とは異なり、独立して看板を掲げられる資格ではありません。
会社員やフリーランスとして、本業に付随するスキルを証明するための資格となります。
しかし、今後はさらにセキュリティに精通した人材はあらゆる場面も重宝されることでしょう。
IT関連の知識・スキルは証明することが難しいものですが、士業として公的に証明できることは、ビジネスにおいて多くのチャンスをもたらすものとなるでしょう。
「情報処理安全確保支援士が参画必須」案件に応募できる
情報処理安全支援士の資格を有する人がプロジェクト参画の条件である案件に応募できます。
例えば、官公庁などの機密度の高い案件に参画するための条件として、情報処理安全確保支援士を有することを挙げている案件が出始めました。
情報処理安全確保支援士を有する企業は案件への参画可能件数が増えます。
その結果、売上増などの事業の発展にも役立てられるでしょう。
個人で支援士の資格を取得しようとする場合、最も大きなハードルは費用面です。
会社がサポートすることでメンバが取得し在籍し続けること。これは
将来的な会社の利益にもつながるでしょう。
情報処理安全確保支援士コミュニティに参加できる
情報処理安全確保支援士になると、一般社団法人情報処理安全確保支援士会(JP−RISSA)への入会できます。
JP−RISSAは会員のスキル維持と向上を目的とした勉強会などを定期的に実施しています。コミュニティに参加することで専門性の高い情報交換が行なえます。
加えて、IPAの情報処理安全確保支援士検索サービスにも登録できます。
検索サービスは得意分野や保有スキル、勤務地などのさまざまな情報が登録できます。
登録の結果、
「現在所在地に近い人は?」
「これから連携したい企業に情報処理安全確保支援士はいるのか?」
を探すことができるようになります。
つまり、ビジネス集客のツールとして検索ツールを活用できるようになります。
情報処理安全確保支援士を取得するデメリット
上記で「最も大きなハードル」として挙げた費用面が大きな負担でありデメリットです。
個人ですべてを負担するのは、正直辛いです。3年毎に免許更新が必要となるので、
以下の金額は3年毎に発生します。金額は2023年12月時点です
①情報処理安全確保支援士登録料 19,700円(登録免許税:9,000円+登録手数料:10,700円)
②毎年の情報更新オンライン教育 60,000円(毎年20,000円×3年)
③3年に1回、の実践講習または特定講習
IPAが行う実践講習:80,000円(1日で8時間ほどの複数名集合の講習)
民間事業者等が行う特定講習:(金額は事業者が設定)
上記計:約16万円(160,000円)です。毎年5万円を超える稼ぎにつながらない限りは、登録する
メリットが見合わない計算です。
【補足】
③については、現地集合型であれば上記に加え移動費用や宿泊費用が必要になります。
(IPAが行う実践講習は、オンライン会議ツールを用いた集合実践講習もあります)
まとめ
上記デメリットにも記載したように、情報処理安全確保支援士として登録すると、維持費で3年16万円を要します。
試験に合格しても、登録していない人が一定数要るのが事実です。
あなたが持つスキルのレベルチェックであれば受験し合格/不合格でチェックできます。
登録は不要でしょう。
あなたが情報処理安全確保支援士として登録し、ビジネスに活かしたいのであれば、この資格取得によって3年16万円を稼げる方法を見つけましょう。
上記の一例でも挙げましたが、プロジェクト参加できる範囲を拡大し、そのプロジェクトに参加できたならば、あなたの資格取得は意義はあったことになるでしょう。
以上です
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